【平壌6月17日発朝鮮中央通信】16日に発表されたキム・ヒョクナム氏の論評「在韓米軍の『戦略的柔軟性』を評する」の全文は、次の通り。
最近、在韓米軍司令官をはじめとする米国の前・現職高位人物らが毎日のように「戦略的柔軟性」をうんぬんし、在韓米軍の態勢の調整および役割の拡大を言い立てている。
はては、在韓米軍の「戦略的柔軟性」が対中国牽制(けんせい)に焦点を合わせており、朝鮮とロシア、中国の算法を変えるようにすると力説するなど「柔軟」の看板の下に隠された腹黒い下心を露骨にさらけ出した。
単なる修辞的威嚇や誇示性言辞と見るには追求する目的からがごく挑発的である。
在韓米軍を地域機動軍化してアジア太平洋地域の紛争と戦場に直接投入するということを公式化したここには、アジア太平洋地域での覇権的地位を在韓米軍の役割変更によってなんとしても維持してみようとする米国の戦略的企図が潜んでいる。
もとより、在韓米軍を含む海外駐屯米軍の役割を拡大するという「戦略的柔軟性」は昨日や今日に初めて提起されたものではない。
冷戦終息以降、地球上の任意の地域で発生する「不確実な安保脅威」に迅速に対応するという口実の下で考案し、「柔軟」のベールをかぶせて悪性的に進化させた米国の根深い侵略教理である。
「柔軟性」の美名の下に駐韓米軍武力の再配置が成され、機動化された「ストライカー」旅団が韓国に循環配置されるなど、周辺作戦地帯への急派を狙った在韓米軍の体質更新が段階的に、系統的に推進されてきた。
在韓米軍の迅速機動軍化が事実上完備した状況の下で「戦略的柔軟性」が再び台頭し、その打撃目標がより明白になったし、作戦の範囲がより具体化されたというところに事態の重大さがある。
覇権野望によって加熱された「戦略的柔軟性」に始動がかかる瞬間、北東アジア地域に潜在しているさまざまな衝突要素を発火させ、巨大な連鎖爆発を起こすということは火を見るより明らかである。
先日、米国政策研究機関が特定の地域での中米衝突がまたたく間に朝鮮半島と日本へ拡散し、核戦争勃発(ぼっぱつ)にまでつながりかねないという衝撃的なコンピュータ・シミュレーション戦争の結果を発表して世人の憂慮をかき立てたのは決して理由なきことではない。
無謀さと慌ただしさまで感知される米国のこのような挑発的歩みの背景には、アジア太平洋地域で反米・自主陣営の急速な浮上と、それによる力の劣勢と覇権的地位の喪失に直面したホワイトハウスの不安な心理が潜んでいる。
これに日を追って複雑になる中東事態と欧州の不安定な軍事・政治情勢の流れが同地域に対する米国の悩みの種を増している。
現存の「複合的危機」の状況に対処してアジア太平洋地域で在韓米軍の役割を多用途化、多角化することで戦略的効率性を最適化し、追随国まで活用した力の集中で地域覇権を維持してみようとするのがまさに米国の侵略的企図である。
主要地域に対する在韓米軍の進出が現実化する場合、韓国が最も効果的な発進基地、第1前哨基地としての役割を果たすようになるであろうし、米韓同盟の従属的構造の下に絡んだ韓国軍の参戦もやはり、不可避なことになる。
在韓米軍司令官が北京から直線距離で400~600キロ離れた所に在韓米軍以外に他の米軍部隊はない、韓国という空母のように強力で、脅威的な戦力投入手段はないと公開的に言い立てたのはそのはっきりした反証である。
韓国を空母にして敵国を圧迫してみようとする米国の無謀な妄動によってアジア太平洋地域で法外な戦争エネルギーの集中と蓄積、膨張が加速化するであろうというのは疑う余地もない。
諸般の事実は、米国の冒険的な覇権追求が地域の戦略的均衡を破壊し、全地球的安全環境を統制不能の破局的状況へ追い込む不治の悪性因子であるということを明白に示している。
アジア太平洋地域に対する積極的な武力介入を追求する米国の覇権的振る舞いによって地域はもちろん、世界の平和と安全環境に多角的で、多層的な脅威を加えるもう一つの新たな不安定気流が造成されている。
正義を志向する世界の多極化は不正義の米国の覇権追求に弔鐘を鳴らした。
現米政府の出現とともに日ごとに無謀になる敵の挑発的振る舞いはわれわれをして最も圧倒的で、攻勢的な抑止力の更新構築と強力な行動的警告の実行に臨まなければならない当為性と切迫さを浮き彫りにしている。
時代錯誤の「力の万能論」に基づいた在韓米軍の「戦略的柔軟性」は不可克服の戦略的孤立と回復不可能な力の衰退だけを招くことになるであろう。---
www.kcna.kp (2025.06.17.)